我より強き者

12/13
前へ
/13ページ
次へ
「ん?俺は部屋を間違えたか?」  その夜、宴は深夜まで続き、義仲様は寝所に巴様がいるのに驚かれました。 「いいえ、間違ってはおりません。」 「そうかぁ、さては仕返しにまいったか?ハハハハ。」  義仲様は、そのまま寝具に転がりこむように横になられました。 「巴は今日よりここで休みます。」 「ん?俺の寝床を奪うきか?これは困った。ハハハハ。」 「違います、巴は義仲様の隣で休みます。」  巴様の言い方が、あまりにも怒った風でしたので、義仲様も一瞬きがつかれませんでした。しかし、 「おいおい、困ったことを。巴には巴の部屋があるではないか。」 まるで幼き赤子を諭すように、巴様の頭をなぜながら言われました。 「もう、巴の部屋はございません。今日より義仲様のおそばが巴の場所にございます。」 「巴・・・」 「巴は決めておりました。自分より強い御方に嫁ぐと・・・。」 「それはできぬ。」 「どうして?義仲様は巴のことがお嫌いか?」  巴様は、いつしか義仲様にしがみついておいででした。その目には並々ならぬ覚悟を秘めておいででした。 「嫌いではない。嫌いではないが、違う。」 「巴は義仲様のそばにいたい。いると決めました。」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加