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「アハハハ。そうか、巴は光兼にも勝ったのかぁ。ますます腕を上げたな。」
久々に揃った兄弟同様に育った者達との食事に義仲様は、楽しまれていました。義仲様にとって中原の兄弟は心の許せる本当の親族以上の者でした。中原の兄弟にとっても義仲様は心許せる、そして尊敬できる大将へと成長されていました。
「巴は、義仲様と勝負がしとうございます。」
決して剣だけは、手合わせしない義仲様に、巴様は不満でございました。
「いや~、巴に負けては恥ずかしいからなぁ。」
義仲様は、いつもそういって避けておいででした。確かに私の目から見ても巴様は剣術においてご兄弟の中でも一番ではないかと思われるほど強くなられていました。義仲様が不安に思うのもわかる気がいたしました。でも、義仲様は別の意味で巴様を避けておいででした。
「巴、調子に乗りすぎるな。いくらお前でも義仲様には、勝てるわけない。」
「そんなことはやってみなければわからぬではないですか。近頃では兼平兄も私には勝てぬではないですか。」
その日の巴様は、まるでだだっ子でございました。光兼様を負かしたことで自信を付けられたのでございましょう。
「そうか、兼平も巴に負けたか。では、俺も巴にはきっと勝てぬ。それでいいではないか。巴が一番じゃ。」
義仲様のその言葉で、いつもはおわるはずだったのですが、この日は兼光様がめずらしく巴様に見方なさいました。
「巴もこのままでは、納得しまい。一度義仲様と立ち会ってみたら良い。」
「オイオイ、兼光、今日は酔っているのかぁ?」
「いやいや、正気にございます。巴も一度は立ち会わねば納得しますまい。このじゃじゃ馬娘は家中で一番と最近は天狗になっておりまする。どうか、我らの敵を義仲様に打って欲しいと思います。そうじゃな、兼平。」
「はい、それで巴も納得いたしましょう。」
「おいおい、兼平まで。御主が一番分かっておるはず。俺は巴とは手合わせできないことを。」
義仲様の剣術の相手を一番多く努めたのは兼平様でございました。義仲様の言葉に、一瞬迷った兼平さまでしたが、巴様は目を輝かせ
「兄者たちも、こう言っております。巴と手合わせを。」
「困った。俺は巴とは手合わせは出来ぬ。巴はかわいい妹じゃ。」
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