我より強き者

6/13
前へ
/13ページ
次へ
 駄々をこねる子供をあやめるように義仲様はやさしく、巴様を諭します。ですが、いつもは反対する兄達の見方がある今日は、絶対引くまいと食い下がる巴様。 「巴は、嫁入り前じゃ。万が一怪我などしたらどうするのだ。兼光兄も兼平もかわいい妹が傷ものになってよいのか。」 「それは・・・」 兼平様の言葉を遮るように 「巴は怪我など、恐れません。」  胸をはっていう巴様に、義仲様は苦笑いしながらも 「あほう、恐れなくても、傷物になってみろ。嫁のもらい手がなくなるぞ。そうなれば、俺は兼平にも兼光兄にも、中原の父上にも申し訳がたたぬわ。」 「巴、義仲様もここまで言っておる。いい加減にあきらめろ。」  しぶしぶ兼光様も巴様の説得にかかりました。だけど、こうと決めたら引くことを知らない巴様があきらめる訳はございません。 「良いのですッ。万が一負ければ、巴は義仲様にもらってもらいますから。」 「こらこら、困ったことをいう。婿さがしにがんばっている兼光兄の前で、思いつきでそういうことを言ってはならん。ハハハハ、なぁ兼光兄。」 「いやいや、ここまで言う巴を止めることできますまい。巴も一度手合わせすれば納得いたします。どうか、一度手合わせを。」  兼光様に、頭を下げられては義仲様もこれ以上無下にすることができず。 「わかった。」 「本当に。」  目を輝かせて、義仲様に抱きつく巴様。義仲様は苦笑いしながらも、巴様の頭をかるくたたきながら、 「ただし、この勝負は中原の父上の許しを得てからじゃ。」  もちろん、この時に義仲様には本当に剣を合わせる気など全くござりませんでした。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加