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「こまったものよ。まさか中原の父上も賛成されるとは・・・。」
「こうなったうえは、覚悟きめてくだされ、義仲様。」
「困ったもの、おれは剣に手加減ということができん。兼平が一番知っているではないか。巴を傷つけたらどうする。」
「ご心配なされますな。巴はそこまで弱くはありません。」
「あほう、巴はおなごではないか、万が一怪我など負ったらどうする。」
「ご心配あるな。」
「中原の父上。今からでも遅くはない、中止に。」
「それは出来ない相談じゃ。義仲殿。ここで、逃げれば大将の器にあらずとなりましょう。それに巴は、おなご。男の強さを知らねば、いつまでも天狗のままで。」
巴様と義仲様の初手合わせとあって、かなりの家中の者が集まってしまいました。巴様が喜んでふれて回った結果でございます。
義仲様は決して家臣の前で剣は振るわずに今までこられたのです。家中の者達は、誰もが義仲様の負けを確信しておられました。私も、巴様の勝ちだと思っておりました。この勝敗を正確に想像できていたのは、巴様の父上中原兼遠様と、義仲様の剣の相手を一番多く努めた兼平様だけだったのでしょう。
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