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「何故、部屋の真ん中にいるの?」 ドアの方からの声に ハッとして振り返った。 「え……」 そこには優しく微笑む 若い男性が立っていた。 「君は何故、近づかずに、真ん中から、それを眺めるんだい?」 「何故……でしょう」 「僕も真ん中に立って見るのが好きなんだ」 「どうしてですか?」 「僕も分からない。分からないから、君に聞いてみたんだ」 男の人はそう言って、 ゆっくりと私の方へ歩いてきた。 「近くに行って触れようと手を伸ばす訳でもなく、遠ざかったり、斜めから見たりする訳でもない。そう言う見方だってあるのに……でも僕は、ここから動けないんだ」 「私もです」 「なんでだろうね?」 「答えは自分の中にあると思いますよ」 「うん。僕もそう思う」
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