8人が本棚に入れています
本棚に追加
「何故、部屋の真ん中にいるの?」
ドアの方からの声に
ハッとして振り返った。
「え……」
そこには優しく微笑む
若い男性が立っていた。
「君は何故、近づかずに、真ん中から、それを眺めるんだい?」
「何故……でしょう」
「僕も真ん中に立って見るのが好きなんだ」
「どうしてですか?」
「僕も分からない。分からないから、君に聞いてみたんだ」
男の人はそう言って、
ゆっくりと私の方へ歩いてきた。
「近くに行って触れようと手を伸ばす訳でもなく、遠ざかったり、斜めから見たりする訳でもない。そう言う見方だってあるのに……でも僕は、ここから動けないんだ」
「私もです」
「なんでだろうね?」
「答えは自分の中にあると思いますよ」
「うん。僕もそう思う」
最初のコメントを投稿しよう!