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「私は綾子です。はじめまして」 先に自分の名前を言って 男の人がさっき笑ったように 笑ってみた。 自然と暖かい気持ちになるのは 彼の雰囲気を 纏った気になったからだろうか。 「僕は一雪です。ここのオーナーで、自分でも絵を描いたりします」 続いて男の人が 自己紹介をしてくれた。 「絵をお描きになるんですか?」 「はい。少しでもこの窓で味わった感動を留めようと、キャンパスに色を置いてみるんです。でも、やはりどこか薄れてしまう」 「飾らないのですか?」 「うん。こんな強烈な作品の周りに、僕の小さな感動なんて飾れない」 「私、一雪さんが感じたものを見てみたい!」 「へ?」 「今度こちらへ伺った時に見せて頂けませんか?」 「そんな……!見せれるような作品ではないよ」 「でもお会いしたいんです。あなたが感じた一期一会に」
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