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ギャラリーを後にして後ろからの車を確認しようと目の前のカーブミラーに目を移す。
そしてその中に映る景色に
息を飲んだ。
ゆっくり後ろを振り替えれば
広がる、空。
長く伸びる雲を
下から太陽が照らし、
紫暗の影が姿を浮き立たせる。
近づく夜に
映える橙。
去り行く青に
覆い被さる橙。
七色の虹のように明るくはないけれど
そこに広がる落ち着いた色彩に
目を奪われてしまった。
こうして道で立ち止まることなどあっただろうか。いつも日常を日常と決めつけて、流すように過ごしていたのは自分自身。
立ち止まり、何かに想いを馳せるなど、したことがなかった。
『どうして夕日に心が惹かれるのかな』
一雪さんの言葉が降りかかる。
「家に帰れるから……か」
やはり、その気持ちは分からない。
でもこうして立ち止まることが出来たのは、夕日に何か想いを重ねたからではないだろうか。
日常のなかに埋もれる景色が、変わりゆく時を私に思い出させてくれた。
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