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そんな思考に飲まれ 日常に溶け込みつつある 私の目に移ったのは 赤い首輪の白い猫だった。 少し小太りで ふてぶてしい態度の猫は、 その道を我が物顔で 通り過ぎる。 そしてこちらを一瞥するも 依然としてその傲慢さを 崩さなかった。 「少しは恐がる素振りをみせたらどうなの?」 その猫に話かける。 「普通の猫ならビクビクするか、足を止めて見るはずよ?」 そう言って、 ゾッとした。 普通を嫌うようなことを言って、結局は普通に屈伏していることに気付いたからだ。 白い猫はもう一度 見下した目で私を見た。 媚びもせず、 王であるかのようなその瞳に 惹かれずにはいられなかった。
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