1.闇生まれし時

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~ベンデムハイム城~ 『はぁはぁはぁ…』 激しい息遣いと足音が響く。 『リア、アウストロ皇帝陛下は?』 青い髪の青年が後ろを振り向くと、直ぐ後ろを走っていた茶毛で長髪の少女に問い掛けた。 『ちょっと苦しそうね…。少し休みましょ。』 リアと呼ばれた少女は、 後ろの様子をチラチラと伺ながら答えると、 『わかった。』 青い髪の青年は、頷き声を出し走るのを止めゆっくりと歩き出めた。 『すまない…。 バーン君、リア君。 いらぬ気を遣わせてしまって…。』 1番後方を走っていた アウストロ皇帝陛下と呼ばれた男が、壁に手を付きもたれ、息を切らせながら言った。 するとバーンと呼ばれた 青髪の青年は、 『気にしないで下さい オレ達は陛下の熱意に負けて、共に行くことに決めたんですから。』 両手を広げ 微笑みながら言った。 『ありがとう、バーン君。』 アウストロ皇帝陛下が激しく 咳込みをしながら礼を言うと すかさずリアが、 『陛下!大丈夫ですか!?』 側にかけより アウストロ皇帝陛下の 背中をさすった。 『このまま、私がいては 足手まといになるだけだ 君達に頼んでおいて すまないが…、私に構わず先に行ってくれ。』 皇帝陛下は 膝を付き、手を口に当て 苦しそうにバーン達に言うと 『でも、陛下…。』 すかさずリアは、心配そうに言葉を返す。 すると、アウストロ皇帝陛下は 『私は大丈夫だ。 少しやすんだら、必ずおいかける。』 視線をリアに向け目を合わせ答えた。 そんな皇帝陛下の必死な声にリアは、眉間にシワを寄せ、 『わかりました…。 陛下がそうおっしゃるなら…。行きましょう』 そう言いながらリアは、 バーンの肩をポンッと叩き バーンの前に出て歩き出した。 バーンも急いで後を追い駆けながら ふと、後ろを振り返ると 『…!?』 アウストロ皇帝陛下は不気味に笑みを浮かべていた…。
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