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衣野 慎吾は自分の茶髪を自毛だと言い張ってたけど、妹も同じ髪色だし本当に染めてないのか。
やっぱ顔も似てんのか?
遼先輩の方を向いてるから後頭部しか見えないのがもどかしい。
クソ、さおりの方に顔向けろよ。
「柊平、何やってんだ?あんま身乗り出したら落ちるぞ」
貧弱な身体に制服を纏い中の野上に忠告されるが、今の俺はそれどころじゃない。
あれが遼先輩の中で桜に猛追して追い越す女。
遼先輩は攻略難易度が高い面倒な男だ。
なのにその遼先輩を短期間で簡単に攻略するとは、相当なやり手か、桜みたいに突出した良さがある女なんだろう。
遼先輩の傍を歩いて、遼先輩をあんな風に自然に笑わせて。
口を閉じたクールな微笑が基本だったはずなのに、歯まで見せて目元まで優しくなって。
何かに満たされた爽やかな顔だ。
あれがさおりの言う“もう惚れてる”顔か……。
「蔵馬!」
遠くから俺の苗字を呼ぶ声ではっと我に返った。
窓の外に乗り出していた上半身を引っ込めながら振り向くと、その声の主は教室の前方ドアの外側に立ってる。
田辺先輩だ。
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