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俺はムーッと口を尖らせ、いつもはヘアワックスで立たせている前髪が垂れ下がった額を右手の指先で摩った。
何で田辺先輩が俺より先に衣野妹と接触するんだよ。
遼先輩とさおりの兄妹との付き合いは俺の方が長いのに。
「……で?その衣……さおりの友達ってどんな女なんすか?」
「ん?興味持ったのそっち?女は薪森以外どうでもいいんじゃなかったのか?」
「変な勘違いしないで下さいよ。あの女嫌いな遼先輩が一緒に行動するなんてどんな女なのか知りたいだけっす」
俺はツンとしながら両腕を組み、廊下の窓辺に背中を寄り掛けた。
「ああ。まあ妹の友達とはいえ小木原が女子と連むなんて珍し過ぎるよな」
「でしょ?特にかわい子ぶった女とか大っ嫌いだし、竹割ったような性格した女なんすか?」
さおりは約束を守って遼先輩達をチャイナ喫茶に連れて来なかったから、俺も約束は守る。
で、さりげなく探る。
「そうだな、はっきりもの言う性格だな。可愛いけどぶりっ子とかじゃなくて、素で可愛くて良い子」
田辺先輩は窓の下に広がったグランドや部活棟に目をやり、その横顔に色気を含んだ爽やかな微笑みを浮かべた。
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