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「じゃあ、そろそろ友達の所に戻るかな」
「あ、お疲れーす」
「お疲れ」
田辺先輩はにっこり笑って俺の左肩を右手で重く叩き、制服のズボンのポケットから携帯電話を出しながら西階段へ向かった。
要は、遼先輩が剣道に復帰しそうだって事をわざわざ教えに来てくれたのか。
それと遼先輩に攻撃を防御された事に興奮して、それを語りたくて堪らなかったとか。
巧も陰ながら遼先輩の復帰を望んでたけど、どうにか引き戻したくて躍起になってるのは田辺先輩と俺だけだからな。
教室の中に戻ってまた窓際の棚上に座った俺は窓の外に上半身を乗り出し、眼下にある出店通りの人混みから遼先輩達を探した。
何処かの陰に居るのか、違う場所へ移動したのか、もう帰ったのか、どれだけ目で探しても此処からは姿が見当たらない。
窓から上半身を引っ込めて、棚上に置きっ放しだった飲み掛けの缶コーラを一気に飲み干した。
近々、久し振りに遼先輩の家に遊びに行こう。
おじさんおばさんとも会いたいし、何より遼先輩との空白の時間を埋めたい。
小木原一家は俺の大切な居場所の一つだ。
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