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『そうかー?遼の方がお兄ちゃんって感じだろー』
彼はけらっと笑って前を向き、両脚を前へ突き出してブランコを漕ぎ始める。
『俺より誕生日早いし、俺より背ぇ高いし、俺より大人っぽいし、俺より声低いし』
彼は自分よりも親友の方が優れていると言いたかったんだと思う。
それでも私は彼みたいな兄が欲しかった。
剣道が強くて男らしくて大人っぽい兄は自慢だけど、彼だったらもっと自慢出来る。
今以上に笑いの耐えない家庭になる、毎日楽しく暮らせる。
『遼は不器用なんだよなー。んでもってプライド高いからややこしくなるんだけど、それが逆に解りやすいんだよ』
ブランコを高く揺らしながら大声で私に伝える彼の言葉は、一瞬で私を救った。
そして、彼が兄の親友になってくれて本当に良かったと思った。
良かったけど、でも。
『……ねえ、恭平くん……もしかして……』
「さおり?お前さおりじゃね?」
閑静な住宅地に広がる暗い夜道に響く声は、驚く程似ていた。
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