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地に足が着いてないような感覚のまま、しっかり歯を食い縛って優の顔だけを見続ける。
意識が遠退かないように、揺るがない現実を受け止める為に。
「そんなの嘘だ」「聞き違いだ」なんて甘ったれた事は思わない。
だって昨日、きっと桜は俺に話そうとしてたんだ。
『……あのね、柊平。……私ね、大学は……』
俺には言い難くて仕方ない話だったんだ。
俺が落ち込むと思って。
「……大学……は」
「ん?ああ、学校はさっき色々話してる時に大分絞ったぞ。後は親と相談して夏休みに現地回りに行くって」
桜が口にした「大学」を元に鎌を掛けてみると、優にはあっさりと通じた。
やっぱり桜はアメリカの大学に行くつもりでいる。
「……高校」
「ん?」
「……高校、ちゃんと卒業してから……だよな?」
「大学なんだから当たり前だろ。しかも恭平が死んだ後も学校は真面目に通ってんだろ?卒業まであとちょっとって所で放っぽり出すかよ」
優は「何言ってんだか」みたいに笑って運転席の全開の窓に右手を突っ込み、ドリンクホルダーにセットしてある車内用灰皿の火消しに煙草を挿す。
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