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「いや、つーか何で俺が遼先輩を殴る前提で物言ってんだよ!勝手に決め付けて説教すんなや!」
暫く呆気に取られていた柊平くんは、また鬼の形相を復活させて私ににじり寄る。
「柊平くんが怒らない訳ないじゃない。片想いの相手がお兄ちゃんと一緒に帰ってるなんて許せないんでしょ?」
私は未だ通学鞄を盾にして柊平くんと一定の距離を保っていた。
この人の口の悪さと手の速さは昔からだし、凶暴な野生児には近寄りたくない。
「お兄ちゃんが剣道辞めた時だって殴ったでしょ、実際。お兄ちゃんは誤魔化してたけど、柊平くんに呼び出された後に顔怪我して帰って来た時点でバレバレだったんだから」
私は兄を擁護したい訳じゃない。
後輩を失望させる様な後味の悪い辞め方をした兄だって悪いし、柊平くんが殴りたくなるのも解る。
でも妹としては兄が殴られるのは余り気持ちの良いものじゃない。
「まあ、確かに殴ったけどよ……」
「ほら、やっぱり。その前にも同じような事あったし、今日も殴るつもりなんでしょ?」
「違うっつの!逆!謝りに来たんだよ!」
え?
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