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私が知っている限りでは、柊平くんは謝らない人だ。
プライドが高いからという事もあるけれど、自分は正しいと思いながら行動しているタイプだから。
そんな柊平くんが兄に謝りたいだなんて、信じられない言動。
「謝るって、何について謝りたいの?」
「お前に関係ねぇだろ。いいから遼先輩呼んで来いよ」
確かに私には関係無いかもしれないけど、人に物を頼むにもこの上から目線。
やっぱり柊平くんは柊平くんだった。
私は持ち構えていた通学鞄を降ろして両手で提げ、きちんと柊平くんと向き合った。
「要するに、柊平くんはお兄ちゃんと仲直りしたいっていう解釈でいいの?」
「……おお。だから早く呼んで来い」
柊平くんは姿勢を整えて私から視線を少し逸らし、スラックスのポケットに両手を入れて肩を竦めながら照れ臭そうに答える。
兄と疎遠になって2年以上経った今、何故仲直りしようと思ったのかが気になった。
聞こうとしてもまた『お前には関係無い』と言われるのがオチだけど。
「お前に一個だけ教えてやる。遼先輩にはこないだ会った。その時の事で謝りたいんだよ」
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