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私に目を合わせないまま言った柊平くんの話に少し驚いた。
「え、会ったの?……いつ?」
「最近」
「だから最近っていつ?お兄ちゃんが足怪我する前?後?」
「怪我した後」
「呼び出したの?」
「道端で偶然会った。つーか教えんのは一個だけっつったろ。質問禁止。早く遼先輩呼んで来いっつの」
しつこく追求すると柊平くんはやっと私に視線を合わせ、苛立った様な表情と口調で私に命令する。
兄は“本日の出来事”を誰かに報告したりしない性格なので、当然兄は柊平くんと再会した事なんて話さなかった。
でもその再会時について柊平くんが兄に謝りに来たという事は、余り良い再会ではなかったのかもしれない。
そして柊平くんは兄と仲直りしたがってる。
私が柊平くんを兄に会わせない理由は無い、けど。
「それなら柊平くんがお兄ちゃんの部屋に来てよ。あの足で階段昇り降りするの大変なんだから」
「嫌だね。遼先輩の部屋で話したらお前に盗み聞きされるもん」
こういうツンケンした態度で失礼な事を堂々と言い放つ所が前は嫌だったけれど、彼のその変わらなさが今は逆に微笑ましくさえ感じる。
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