SAORI 6

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これ以上この世界をつまらないと感じ続けたくなかった。 兄だけでなく私まで絶望感に溢れていたら、家庭内の雰囲気も良くならない。 大切なものを一度に失った兄を支える立場にならなきゃ駄目。 私はこんな精神状態のままずるずると過ごしていられない。 「……いいよ。デートする」 だから私は彼を頼った。 彼なら虚無の世界から私を連れ出してくれる。 彼は私に新しい世界を見せてくれる、と信じて疑わなかった。 藁にも縋る思いだったのだ。 彼は藁に例えるのが失礼に値する程、私にとって救いの存在となるのだけれど。 お試しデートと題して県内最大の動物園に行った際、彼は本当に私をずっと笑顔にさせてくれた。 彼が元々持っている明るさと無邪気さとコミュニケーション力、それに頑張りも加わっていたんだと思う。 全9時間のデートで見事に私は彼に心を掴まれたのだ。 この時点ではまだ恋愛感情ではなかったけれど、“もう少し一緒に居たい”“また一緒に何処か行きたい”という気持ちが芽生えた。 “楽しみたい”から“彼の事をもっと色々知りたい”へと変わって行く。
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