3080人が本棚に入れています
本棚に追加
この時みたいに、彼と二人で校内を歩いていた最中に柊平くんと遭遇すると、変に気まずい雰囲気がプラスされる。
「あ……先に行っとくから」
彼が妙な気を利かせて独り先に教室へ向かってしまい、柊平くんと二人にされると余計に。
「……ふん。いっちょ前に男なんか作りやがって生意気な」
「……自分がモテないからって僻まないでくれる?」
「あん!? 僻んでねぇしモテてっから!」
でも柊平くんは以前と変わらない憎たらしさで接してくれるから、その点ではかなり助けられる。
柊平くんは兄みたいに無気力で暗い男にはなっていない。
桜さんを支えなきゃいけない位置に居る彼は、表面上では変わらないのだ。
「……」
「……」
だけど時折沈黙になるのは、やっぱり気まずさがあるから。
兄を亡くした上に先輩と絶交した男と、その絶交した先輩の妹という関係だ。
「……桜さん、元気?」
「……元気ではねーな」
「……だよね……」
軽々しく訊くべきじゃなかったな、と後悔した私はこれ以上桜さんの近況を尋ねるのは止めた。
最初のコメントを投稿しよう!