SAORI 6

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この時みたいに、彼と二人で校内を歩いていた最中に柊平くんと遭遇すると、変に気まずい雰囲気がプラスされる。 「あ……先に行っとくから」 彼が妙な気を利かせて独り先に教室へ向かってしまい、柊平くんと二人にされると余計に。 「……ふん。いっちょ前に男なんか作りやがって生意気な」 「……自分がモテないからって僻まないでくれる?」 「あん!? 僻んでねぇしモテてっから!」 でも柊平くんは以前と変わらない憎たらしさで接してくれるから、その点ではかなり助けられる。 柊平くんは兄みたいに無気力で暗い男にはなっていない。 桜さんを支えなきゃいけない位置に居る彼は、表面上では変わらないのだ。 「……」 「……」 だけど時折沈黙になるのは、やっぱり気まずさがあるから。 兄を亡くした上に先輩と絶交した男と、その絶交した先輩の妹という関係だ。 「……桜さん、元気?」 「……元気ではねーな」 「……だよね……」 軽々しく訊くべきじゃなかったな、と後悔した私はこれ以上桜さんの近況を尋ねるのは()めた。
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