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「……部活引退したよね。お疲れ様」
「おう」
「やっぱり田辺くんみたいに西海高に行くの?」
「まーな」
「そっか」
「……」
「……」
「……」
「……お兄ちゃんなら毎日ちゃんと高校行ってるよ」
「……訊いてねーよ、バーカ」
柊平くんは眉を潜めてふいっと私から顔を逸らし、制服のスラックスに両手を入れながら3年生の自分の教室へ向かって去ってしまった。
二人の関係はかなり拗れてしまっている事が解る。
学年が違う私と柊平くんは滅多に校内で遭遇しない。
それに私達は今ではもう赤の他人も同然。
そんなまま柊平くんは中学を卒業し、剣道の強豪である地元の西海高校に推薦で入学。
私が中学3年生に進級すると、蔵馬兄弟の三男の亮平くんが入学して来た。
野球少年の亮平くんは野球部に入部し、私立の東郷学園中等部に合格した弟に会いに家に来る事も多々ある。
うちの母に柊平くんの近況を訊かれると、亮平くんは柊平くんの恥ずかしい話は特に生き生きしながらぺらぺらと語る。
兄は興味が無い振りをしつつ、聞き耳はしっかり立てて柊平くんの情報を仕入れていたと思う。
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