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「ちょっと、一真……!」
私は一真の両肩を押す両手に力を込めるけれど、彼は何が何でも私の首筋にキスマークを付けようとしている。
見える場所にキスマークは嫌だっていつも言ってるのに、一真はいつもそう。
「止めて!」
頭に血が昇った私は、一真の胸を両手で思い切り突き飛ばした。
さっきの「CD貸して」は退席する為の口実だったと解り、怒りが沸々と沸き上がる。
「下に皆居るんだからちょっとは考えてよ……!」
「……うちでやる時だって家族居たりするじゃん」
突き飛ばされた先の少し離れた場所から、一真は無表情で私を見据えて屁理屈で返した。
様子がおかしい。
「……怒ってるの?」
「何に?」
「柊平くんが言った事が気に障ったの?」
そうとしか考えられなくて、能面な一真の瞳を覗き込みながら率直に問い掛けた。
「そりゃあ障るよ。めちゃくちゃムカつくね」
感情を感じられない冷やかな眼差しで私を見つめ返す一真は、その返答と逆の冷静な口調で素直に答える。
さっきの柊平くんの言動にムカついている、と。
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