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「……お前は?」
黙って話を聞きながら私をじっと見つめ返していた柊平くんが、私に疑問形の言葉を口重く返して来た。
「お前も寂しかったのか?俺が来なくなって」
まさか私の気持ちまで確認しようとするとは思わなくて、私は少し驚いてしまう。
柊平くんにとって私達家族の中で一番深い関係なのは兄で、弟も柊平くんの弟に会いに蔵馬家へ行くので柊平くんとも親しい。
でも私は柊平くんにとって“先輩の妹”で“弟の友達の姉”であって、だからこそ意外だった。
柊平くんは口が悪くて意地悪でデリカシーが無くて、何度ムッとさせられたか分からない。
でも。
「寂しかったよ」
煩い人がパッタリ来なくなるのは寂しい。
離れて行かれるのは悲しい。
一度に二人もいなくなるのは寂し過ぎた。
「私でさえそうだったんだから、お兄ちゃんが寂しくならない訳ないでしょ?」
切実な眼差しで切実に告げると、私を見る柊平くんの眼の表情が微かに変わった。
きっと彼はそれに気付かずに今日まで来たんだ。
兄が言葉や態度で示してあげなかったから。
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