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私のもう一つの希望はそれだ。
でも行くきっかけも繋がりも失って、行きたくても行けなかった。
それを柊平くんの方から申し出てくれるなんて。
「……行っていいの……?」
「来ちゃ駄目な理由とかあんのかよ。来ていいから来いっつってんだろが」
放心状態の私に答える柊平くんの口調は1年前から変わらないけど、顔付きは何処か大人びている。
知り合って初めて見る顔かもしれない。
「……お兄ちゃんと一緒に?」
「遼先輩は遼先輩のタイミングで来るだろ。取り敢えず明日はお前だけ来い」
兄は兄のタイミング、か。
確かに兄と私とでは状況が違う。
「……分かった。じゃあ明日行かせて貰います」
「おお。お前うち知ってんだろ?なら5時位に直接来い」
柊平くんの家に直接、ね。
柊平くんの家に直接?
「……行った事無いから分からないんだけど」
「ああ?」
「だって、お兄ちゃんや翔と違って私は蔵馬家に行く理由無いし」
「……あ。確かに」
3メートル程離れて向き合っている私と柊平くんの間に、妙な空気が流れた。
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