SAORI 2

14/21
前へ
/751ページ
次へ
私のもう一つの希望はそれだ。 でも行くきっかけも繋がりも失って、行きたくても行けなかった。 それを柊平くんの方から申し出てくれるなんて。 「……行っていいの……?」 「来ちゃ駄目な理由とかあんのかよ。来ていいから来いっつってんだろが」 放心状態の私に答える柊平くんの口調は1年前から変わらないけど、顔付きは何処か大人びている。 知り合って初めて見る顔かもしれない。 「……お兄ちゃんと一緒に?」 「遼先輩は遼先輩のタイミングで来るだろ。取り敢えず明日はお前だけ来い」 兄は兄のタイミング、か。 確かに兄と私とでは状況が違う。 「……分かった。じゃあ明日行かせて貰います」 「おお。お前うち知ってんだろ?なら5時位に直接来い」 柊平くんの家に直接、ね。 柊平くんの家に直接? 「……行った事無いから分からないんだけど」 「ああ?」 「だって、お兄ちゃんや翔と違って私は蔵馬家に行く理由無いし」 「……あ。確かに」 3メートル程離れて向き合っている私と柊平くんの間に、妙な空気が流れた。
/751ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3080人が本棚に入れています
本棚に追加