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柊平くんは右手をスラックスのポケットから出して頭を掻きながら溜息を吐き、少し考えた後で私に言った。
「じゃあお前のケー番教えろ。連絡すっから」
彼が出した結論は、携帯電話の番号交換。
柊平くんはスラックスのポケットから艶やかな黒い携帯電話を取り出して開き、何やらボタン操作を始める。
携帯電話の好みまで兄と一緒だ。
「おら、携帯。赤外線」
「え?……あ、うん」
柊平くんは無愛想に私の携帯電話の赤外線を要求し、私は慌てて通学鞄のサイドポケットからパールホワイトの携帯電話を取り出す。
そして赤外線通信でお互いのアドレスを交換した。
私のアドレス帳に登録してある異性は父と兄と弟と、祖父と伯父と叔父と従兄弟、そして一真だけ。
もし一真がこの“蔵馬 柊平”の文字を見たりしたらどう思うだろう。
「じゃ、電話ちゃんと出ろよ。待ち合わせ場所とか時間は明日の気分で決めっからよ」
柊平くんは携帯電話をまたスラックスのポケットに仕舞い、そのまま両手をポケットに突っ込んで両肩を竦めた。
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