SAORI 8

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「え……知らない、って……」 驚愕する私に対し、彩芽は罰が悪そうに眉尻を下げて笑った。 慎吾くんには秘密で慎吾くんの友人と付き合うなんて、想像するだけでもスリリングで怖い。 「……慎吾くんに全然気付れなかったの……?」 「何とかねー。かなり神経擦り減らしたけど。ね?」 彩芽が苦笑いを謙司さんへ向けて話を振ると、謙司さんも苦笑いで頷いて同調した。 「まあ……慎吾に男らしく言い出せなかった俺が全部悪いんだよ。慎吾とは小2からの仲だから怖じ気付いちゃって」 謙司さんと慎吾くんが小学2年生の頃からの仲だと知った私は、慎吾くんの姿を頭の中に思い描きながら何と無く納得した。 私の知る慎吾くんは彩芽が大好きだ。 年上の兄としてというより、まるで双子の片割れの様に対等で自分の分身的な見方をしている印象がある。 彩芽と接する慎吾くんは数える程しか見ていない私でさえそう感じるなら、10年もの付き合いがある謙司さんから見ると……。 「そんな意気地無しで不誠実な男だから彩芽からも振られる訳だけど」 謙司さんは自虐的に笑った。
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