SAORI 8

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「仲間の中で一番長いのが慎吾だし、彩芽は保育園児の時から妹みたいに可愛がってた子だし。まさか年頃になってから恋愛感情芽生えるなんて思わなくて、色々と怖くなっちゃったんだよね」 隣の彩芽は両腕を組みながら自分の膝元を一点に見つめていて、口角を上げた穏やかな表情で謙司さんの言い分を聞いている。 「『幾ら可愛くても友達の妹は無理』とか『慎吾の妹だけは絶対手ぇ出せない』って友達もいたし、俺も元々はそうだったんだよ。だから女として見るようになってきた俺っておかしいのかなって思ったり」 謙司さんのその語り明かしは少し胸に来るものがあり、さっきの言葉の意味も何となく解けてきた。 それと同時に不安感が押し寄せて来る。 もしかして兄も彩芽への感情に規制を掛けようとしていたりする? 彩芽を好きになってしまうと慎吾くんに悪い、と思ってる? 「俺と彩芽の関係知ってる友達皆に『彩芽が可哀相だし慎吾にも失礼だ』って随分怒られたのに、焦れば焦るだけ動けなかった」 兄に彩芽を推す事は間違ってる事なの? 私は彩芽に苦い過去を繰り返させようとしてる?
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