SAORI 8

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ところが、次の瞬間。 「お兄ちゃんの許可取ってくれる人なら、お兄ちゃんの友達でも全然いいけどね。極論で言うと」 彩芽のその補足を受け、地獄から引き上げられた気分になった。 極論でも、兄が対象に入るのかは不明確でも、慎吾くんの許可を取るつもりがあるのなら可能性はあるのだ。 兄は礼節を重んじる生真面目な性格上、必ず慎吾くんの許可を取ろうとする筈。 でないと一真に腹を立てる権利が無いし、示しも付かないし、これは自信を持って断言出来る。 兄は絶対に大丈夫。 「じゃあ、うちの」 「うわあー、何か日本刀で串刺しされた気分っす!」 兄は対象になるか訊こうとした時、両手で左胸を押さえながら前屈みになる謙司さんに遮られてしまった。 遠回しに批難されたみたいで胸を(えぐ)られたのは解るけれど、今だけは邪魔しないで欲しかった。 「ごめんごめん、そういうつもりで言ったんじゃなくて。全然憾んだりしてないって何回も言ってんじゃん」 彩芽は笑いながら謙司さんの左肩を2回軽く叩き、さっぱりとした明るさでフォローを入れている。
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