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兄が彩芽を好きという事だけは確実で、問題は慎吾くんという高いハードル。
そして彩芽が兄に恋愛感情を抱くかどうか。
「……二人は、今後も縒りを戻すつもり無いの……?」
僭越ながら私は二人へ向けて最後の質問をした。
この確認だけは取っておかないと今夜は安心して眠れない。
「うん、それは絶対に無いよ」
彩芽は晴れやかな微笑で清々しく答えた。
もう謙司さんの事は吹っ切っているという証拠になる様な表情、きっぱりとした口調と台詞で。
謙司さんに対して申し訳ないけれど、それが聞けて安堵した。
兄が彩芽を掴まえに行くかどうかが定まる前に、彩芽が謙司さんの方を向いてしまう可能性は無いのだ。
「ね。有り得ないよね」
「うん、無いな」
彩芽が笑顔で謙司さんに振ると、謙司さんも笑って同調した。
その謙司さんの顔はあの人懐こい笑顔じゃなく、何処か陰りのある笑顔に見えるのは気のせいだろうか。
「重めえぇぇっ!」
それから数分後、中身がパンパンに詰まった大きな買物袋を両手に提げた慎吾くんが帰宅した。
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