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「彩芽ちゃーん!掃除機ー!青海苔ぶち撒いちまったー!」
「あー、今持って来るー!さおり、キャベツこの中に入れちゃっていいから」
「はーい」
謙司さんに呼ばれた彩芽は生地が入ったボウルを私に託し、リビングを出て掃除機を取りに行った。
「ったく謙司の奴そそっかしいなー」
危なっかしい手付きで豚バラ肉を切る慎吾くんは、青海苔を床に零した謙司さんについてぶつぶつ言っている。
キッチンには私と慎吾くんの二人だけ。
この状況はチャンス。
「……慎吾くん、ちょっと訊きたい事が」
「ん、何ー?」
私はキャベツを刻む手を一旦止め、左隣で豚バラ肉を切っている慎吾くんの麗しい真剣な横顔を見据えた。
「慎吾くんがお兄ちゃんを嫌いになるとしたら、それってお兄ちゃんが何をした時かな?」
流石に『お兄ちゃんが彩芽を好きになったらどう思う?』なんて訊けない為、様子見として遠回し過ぎる質問をぶつけた。
すると慎吾くんは案の定ぽかんとした顔をして私を見る。
「へ?……ごめん、ちょっと言ってる意味が……。もう一回言ってくんね?」
ですよね。
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