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「……は?」
私を見つめる兄は、奥二重の切れ長な目を大きく開いて間抜けな声を出したのだ。
その反応と表情に表れているものは、驚きと動揺と戸惑い、そして色白な肌が微かに紅く染まったので、もう確定。
私の思惑通りに、客は彩芽だと思ってる。
兄にとって桜さんは“可愛い子”という連想では出ない筈だし、兄にとって女の子は彩芽しか残らない。
この予想以上の好反応なら、私の願いは叶う可能性が高い。
「ほら、行って行って。あんまり待たせないで」
兄の反応に大満足した私は松葉杖二本を兄に押し付けて急かす。
「えっ……ちょっ……えっ?」
兄は戸惑いながら松葉杖を両脇に従えて握り、私の顔を何度か見つつゆっくりと松葉杖を前へ着き始めた。
やだ、面白過ぎる。
私は兄の部屋から廊下へ出て、手摺りを掴みながら片足で一段ずつ階段を降りる兄を見送った。
彩芽だと思っていたら柊平くんだった、の瞬間の兄の反応も面白そう。
でも私は嘘は言ってない。
柊平くんの目が大きいのは事実だし、童顔だから可愛く見えない事もない。
可愛い後輩、でも通るし。
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