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SHUHEI 壱
俺は遼先輩が大好きだ。
剣道が好きで、厳しくて、糞真面目で、優しい遼先輩が。
小4の時からずっと憧れて、もう一人の兄貴だと思ってずっと慕ってた。
だから許せなかった。
『僕はお前に慕われるような男じゃない。……失望でも何でも勝手にすりゃいい』
哀しくて、裏切られた気持ちで一杯だった。
何の相談も無しにいきなり剣道を辞めた事も、遠ざけられた事も。
俺は全てを認めた上で慕ってたのに、遼先輩自身が『慕われるような男じゃない』と俺の気持ちを否定して。
自分を蔑んで、壊れて。
遼先輩が桜に惚れてる事なんかとっくの昔から気付いてて、それを知ってて慕ってたのに。
遼先輩は桜も親友も困らせるような事はしないって解ってたのに。
強い遼先輩も弱い遼先輩も引っくるめて大好きだったのに。
剣道を捨てて、俺を遠ざけた遼先輩が憎かった。
だから力一杯殴って、そのまま遼先輩から離れた。
でもやっぱり嫌いになれなかったし、遠くなる程に慕情が募った。
強い遼先輩の姿が忘れられない。
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