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田辺先輩は上半身をソファーの背凭れに戻して、眉尻を下げた微妙な微笑を俺に向けた。
「さおりちゃんの彼氏が雲隠れしてるのが小木原は気に入らないみたいだし、蔵馬は変にコソコソしないで堂々としてた方がいいと思うぞ?」
確かに田辺先輩はからかってる訳じゃなく、真剣に言ってるようだ。
が、俺はさおりの彼氏とは立場がまるで違うから、そのアドバイスはおかしい。
「コソコソなんかしてないっすよ。何も疚しくないのにわざわざ報告する方が変だと思うだけで」
「小木原はそうは思わないからびっくりしてたんじゃないか?飼い犬に噛まれたような気分でいるかもよ」
口を尖らせて強く反論するも、苦笑いの田辺先輩に返された冷静な見解には反論出来なくなる。
例え話でも“飼い犬”って言葉には良い気がしないが、自分を客観的に見るとその例えに説得力はある。
俺は基本的に遼先輩を信奉して懐く後輩だ。
「田辺先輩も遼先輩はシスコンだって思ってるんすね」
「え?いやシスコンとまでは思わないけど……。蔵馬は思ってるの?」
思ってなかったのかよ!
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