SHUHEI 捌

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「薪森の事は殿堂入りにして、次に好きな子を拠り所にしたり付き合ったり結婚したらいいんだよ」 桜を殿堂入りにする、なんていう田辺先輩の考え方に目から鱗が落ちた。 女と交際した事なんか無い癖に、何という鋭い着眼点。 諦め切れない事を“殿堂入り”という言葉に変えると、妙だけど先の見通しが良くなる気がしてくる。 「……まるで桜が他の男の嫁になるって確信してるみたいな言い草っすね」 なんて憎まれ口を叩いて反抗してしまうのは、田辺先輩の話は正論で説得力があって何だか悔しいからだ。 確かに望みが裁ち切られるように桜に振られたが、それをさおり以外の人間には話してないのに、桜が他の男と結婚する前提で説教するし。 「お前を4年以上も見てれば確信に近いもの持っちゃうよ。薪森は蔵馬と男女関係になるつもり無いんだろうなって」 田辺先輩は申し訳なさげな苦笑を浮かべ、また俺の痛い所をぶっ刺すように突く。 今まで黙って見守ってくれてた癖に、今は全く遠慮無しに毒を爽やかに吐いてくる。 「だから俺はさおりちゃんを推薦したいわけ。あの子ちょっと薪森っぽい所ない?」
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