SHUHEI 玖

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「ついさっき出掛けました」 不機嫌になった遼先輩が全く答えようとしないから、代わりに翔が田辺先輩の質問に応答した。 ていうか出掛けただと?さおりの奴。 「え、ほんと?何処行っちゃったの?」 「ちょっと分かりません。バタバタして出て行ったので」 「何か買いに行ったのかな?」 「近所に買い物っていう感じではなかったですね。小綺麗な格好をして行ったので誰かに会うのではないかと」 田辺先輩との対話に淡々と応じる翔が右手中指で眼鏡をクイッと上げる。 ていうか小綺麗な格好して誰かに会いに行っただと?さおりの奴。 俺らのインターハイ祝勝会を欠席するつもりか?さおりの奴。 「急用かな?さおりちゃんがこっちを投げ出すとは思えないし。な、蔵馬」 翔の向こう隣に座ってる田辺先輩が顔をひょいと出し、俺に目を合わせて同意を求めてきた。 わざとらしい。 「さあ」 俺は無表情で両肩を(すく)めたお手上げポーズを取り、左横側に座ってる遼先輩の表情を横目でチラッと窺った。 何故か俺の顔を凝視している遼先輩とバッチリ目が合った。
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