SHUHEI 玖

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遼先輩から離れた俺を巧が“薄情”だって言ったけど、確かにそう言われても仕方ない部分もある。 魂が抜けて人形みたいになった桜は傍で支える事しか考えなかったのに、剣道を辞めたからって心底失望して遼先輩の方は見限った。 憧れの存在以前に、友達を亡くして落ち込んでる思春期の少年だったのに。 『僕はお前に慕われるような男じゃない。……失望でも何でも勝手にすりゃいい』 『お前が勝手に買い被ってただけだし、僕からすりゃ失望も何もないけどな』 あの時、遼先輩は無気力に嘲笑しながら俺に弱々しく言った。 『……重いんだよ、お前のそういうとこ……』 かなり剣道が強くてちょっと大人びた性格してるだけの普通の少年に、どんな状況下だろうとやる気を維持させようなんて今思えば酷な話。 16歳になったばかりの遼先輩と14歳の俺が選んだ道は、18歳と17歳に成長した現在の遼先輩と俺を後悔させてる。 剣道界の逸材だった遼先輩に無駄過ぎる空白が出来た事。 俺と遼先輩の絶縁に周囲を巻き込んで迷惑掛けた事。
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