SHUHEI 玖

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巧は「まだ教えてもらってないんですけどー」と不満げに嘆くが、田辺先輩は微かに安堵の表情を浮かべた。 やっぱり俺の知らない何かが裏に潜んでるっぽい。 「ふふー。久藤さん達の曲これに録音してくれたから受け取りに行ったのでーす」 さおりはデレたような笑顔でハンドバッグの中から紙袋を取り出し、更にその紙袋の中からCDケースを取り出して遼先輩に掲げ見せた。 軽音部の曲が録音されたディスクなんだろうが、遼先輩はチラッと一瞥しただけで無反応のまま食事を続行。 俺からすれば今直ぐ曲を流させたい位の代物なのに、その価値の分からない男はこれだ。 「へえ、久藤達の。何曲入ってるって?」 「オリジナルだけ4曲って」 「4曲っていうと、文化祭に合わせて作ったっていう新曲も入ってるのかな」 「勿論。あの曲好きって伝えたらわざわざくれたんです」 いつの間に軽音部の曲を聴いていたのか不明だけど、とにかく上機嫌なさおりは田辺先輩と話を弾ませてる。 女装の準備があったせいで今年の文化祭での演奏を聴けなかった俺は、さおりが貰ったそのディスクが聴きたくて仕方なくなってムズムズした。
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