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青嶌は出身中学が違うし家も並木町から離れてるものの、剣道の推薦で西海高校に来た奴だ。
強ければ強いほど剣道界で有名になるし、青嶌が遼先輩を知ってるのは当たり前。
俺と巧と青嶌も、この高校で一緒になる前から大会で顔見知りの関係ではあった。
「骨折したらしいよ。声掛けなかったのか?」
「だって小木原君は僕なんか覚えてないでしょうから」
「ああー……はは」
田辺先輩は納得したようなホッとしたような微妙な作り笑いを零した。
当たり前だ、遼先輩は同門仲間と部活仲間以外で自分の足元にも及ばない奴は眼中に無かったし。
俺も自分より強い奴しか眼中に無いけど、青嶌の事は覚えていた。
「それにもう剣道辞めた人だし、女の子二人に囲まれて楽しそうだったんで水差しちゃ悪いかなって思いまして」
覚えていた理由は嫌悪感だ。
こいつの爽やかな微笑の下に見え隠れするものに。
一見同じタイプでも、田辺先輩とこいつは違う。
「ハッ。剣道辞めた癖にいい気になってるとでも言いたいのか?ありゃ妹だっつの」
堪らず俺は嘲笑を青嶌に向けた。
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