SAORI 8

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「……そう、なんですか……」 謙司さんの本音を聞かせて貰って、やっと自分のしていた事は独り善がりだったのかもしれないと自覚した。 彩芽に接する兄の顔を見たという柊平くんも賛同してくれたし、絶対に兄は彩芽に恋愛感情を抱いてるのに。 もし兄が慎吾くんの妹だから好きになりたくないと思っていたりするのなら、兄のフラストレーションが益々溜まってしまう。 「……彩芽は、もう慎吾くんの友達は懲り懲りとか思ってたりするの……?」 取り敢えず私は消沈した気分をどうにか立て直し、次に彩芽の本音を訊いた。 私から見た限りでは、彩芽の気持ちは兄の気持ちよりも小さい。 ただでさえ未だ別れてくれない彼氏という障害があるのに、兄を謙司さんと重ねられてしまうと恋が成立しない。 「んー。正直、もうお兄ちゃんの友達は好きになりたくないとは思っちゃってるよね」 両眉尻を下げて苦笑する彩芽は、兄の友人との恋愛にはやっぱり否定的だった。 という事は、うちの兄もその否定的な恋愛相手に当て嵌まっているという事。 私の独り善がりが確定した瞬間で、頭を撲られたみたいな衝撃。
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