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「では行って参りまーす!」
菫さんが右腕を上げながら俺ら蔵馬一家に対して声高々に出発宣言すると、葵さんと慶が後ろのタクシーに乗り込む。
そして前のタクシーに菫さんが乗り込んだ時、桜がくるりと身を翻して俺の顔を見た。
ツカツカと俺に向かって突進して来て、何事かと思いながら少し身構えた直後。
「応援してるから、怪我だけはしない様にね」
ふわっと俺の背中に両腕を回して優しい力で抱き締め、右耳元に在る桜の口が囁いた。
妙に今日の桜はハグ大放出してるけど、やっぱり嬉しいしドキドキするし、そしてちょっと切ない気持ちにもなる。
桜はビッチじゃない。
こうやって桜が自分から抱き締めるのは多分俺だけ。
恋愛じゃなくて、家族愛。
だけど哀しがるよりも喜ぶべきなんだ。
恋愛感情が無くても、俺だけに許された特別な特典。
「……ったり前だろ。俺を誰だと思ってんだよ」
また出そうになった涙を引っ込める為、俺は減らず口を叩きながら笑って見せた。
すると桜もふふっと笑い、スッと俺から離れてそのままタクシーに乗り込む。
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