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でも、やっぱり応答も物音も全く聞こえて来ない。
階段を降りて行く音なんて聞こえなかったし、近くに在るドアの開閉音が聞こえたから、絶対に2階のどれかのドアの向こう側に居る筈。
返事すらしてくれないという事は、あれでもナイーブな人だし物凄く落ち込んでるんだ。
私は自分のした事を益々後悔して、小さく深呼吸する。
「……柊平くん、ごめんね」
そして何処かに居る柊平くんへ向け、静かな口調で謝った。
「せっかく呼んでくれたのに、嫌な話しちゃってごめんね。今日はありがとう」
そしてゆっくりと身体を階段の方へ向けて、ゆっくりと足を前へ進める。
やっぱり私はもうこの家に来る事は無いんだな、と思いながら。
でも、やっと恭平くんに挨拶しに来れて良かった。
恭平くんの家に来れて、恭平くんの部屋を見れて嬉しかった。
でもちょっぴり後味が悪い。
柊平くんの事もそうだけど、恭平くんの事も。
恭平くんは本当に死んじゃったんだな、と強く実感してしまった。
恭平くんに逢いたくなった。
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