プロローグ

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    温かい夕日が私を包んだ。 あの頃と何も変わらずに私を迎えてくれるその光は 昔そこにいた人の姿を映しだすように照っている。 古びた柵。 所々が剥げかけたコンクリートの床。 閉ざされた空間。 手を伸ばせば届きそうな空。 どれもが昔と変わらない。 変わってしまったのは私だろうか。 それとも先生だろうか。 10年前のあの日、あの時期に、私は確かに恋をした。 一人では抱えきれないほどの 大きな大きな恋愛という感情を。 時にはこぼしながら、 時には拾い集めながら。 そんな風にして私は一生懸命恋をしていたと思う。 誰かに語るべき綺麗な話ではないけれど、一つ私の淡く切ない恋話を聞いてはもらえぬだろうか。 夕日が沈み終わるまでの間だけ。
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