魔法使いの手

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「お腹いたぁい」 私は、すぐお腹が痛くなる質だった 試験の時とか、修学旅行の前日とか、嵐の夜とか。 そして今日みたいな、怖い映画を見た後も。 おじさんはスプラッタ映画やホラー映画を平気でみる。 おじさんが見るから、私も見るけど。 あれは、お腹に悪いだろう。 「また、お腹が痛いのかい」 おじさんが、寝転んだ私を見下ろす。 「うん」 私は苦し紛れに頷いた。 私のお腹が痛くなり始めたのはメアリーが死んでチャールズが悪魔と契約してフランクがぐちゃぐちゃになってトーマスが…。ここからは言えないけど、その後ぐらいからだ。 おじさんが私の隣に座る。 「よっこらせ」 「う、うわっ」 と、おじさんは急に私の頭を持ち上げ自分の膝の上に乗せた。 「かわいそうに」 そうして、本当にかわいそうな顔をして私のお腹をゆっくり撫でる。 「僕が変わってあげられたらいいのに」 その言葉は少し嬉しいけど。 「いいよ、別に」 おや、とおじさんは意外そうな顔をした。 お腹を撫でる手は優しい。 おじさんの手は何時だって優しいけど、こんな時は特別だ。暖かい。 うとうとする意識の中、私は確かに幸せだと感じた。 (だってお腹が痛い時は、)(魔法使いの手が撫でてくれる)(メアリーの悲鳴が、遠く聞こえた)
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