『甘党な神様はいつも気まぐれ』

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この町のちょうど中心部。 そこには古くよりチョコ神様を奉った祠が建てられている。 チョコ神様の祠に自分の知っている一番美味しいチョコを貢ぐと、ひとつだけ願い事が叶うとされていた。 合言葉は──── 「チョコ神様、チョコ神様。 これが世界で一番美味しいチョコレートです。 私の願い事を叶えてください」 カナは手提げのバックから包装された小箱を取り出し、祠の手前に置いた。 「どうか私を、宮下君と両想いにしてください」 静寂が包む雑木林にカナの声が響き渡り、そして風に混ざって消えた。 「……チョコ神様、私の願い事聞いてくれたかな?」 「ねえねえ」 不意に強風。 ──共に、鈴の音。 「うん……?」 声のした方を向くと、そこには小柄な男の子がいた。 男の子は口を開く。 「ねえねえ。それってさ、ズイロのチョコレート?」 「え?うん、そうだけど……?」 「へぇ~!僕、ズイロのチョコレート大好きなんだ!いただきまーす!」 「え?……って、ちょっと!それ、チョコ神様への貢ぎチョコなんだから!」 「うん、わかってるよ?だから、こうして美味しくいただいてるんじゃないか」 「はぁ?何言ってるの?」 「だーかーらー…… 僕がそのチョコ神様なんだよ?」 甘党な神様は自由翻弄。 小さくて子供のよう。
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