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それはそれは、楽しい楽しい時間だったさ。
そうして俺は暫く楽しい時間を過ごし、やがて殺人の余韻も、おばちゃんの温かいお茶に溶けるようにしてなくなった頃、あることに気付いたんだ。
姉ちゃんの言葉、そう。
『外は危ないから暗くなる前に帰ってくるんだよー』
マズい。
マズい。
ひっじょーにマズい。
わたくし、檪慎太郎。
現在大変ピンチであります。
俺はおもむろに立ち上がった。
「もういっちゃうんかえ?」
「悪いおじちゃん!! 本当はもっとゆっくりしてきたかったんだけど、門限が……」
「そうじゃな、外はもう相当暗いから気を付けて帰るんじゃぞ?」
「ありがと!!」
そして俺は勢い良く駆け出していった。
夜の町を大胆にも横切る。
出会い様に何人か殴り倒した。
そして
ヤバい。
門限なんつうレベルじゃねぇぞこれ。10時はヤバい。殺される。殺される。殺されちまう!!!!
やっとのことで到着。
何かが聞こえる。
ああ。
姉ちゃんの泣き声だ。
ドアを開けると
姉ちゃんが綺麗な顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
ヤバい。
そして
その後ろで
阿修羅の如く形相で立っているのは……。
そう
親父。
「慎太郎」
野太く低い迫力ある声。
ヤベぇ軽くちびる。
「お前……泣かせたな?」
俺を見た姉ちゃんは、安心からか更に大声で泣き出した。
「ばや゛く゛……うぇーん……ひっぐ、がえっでぐるって、ぐすん、いっでたのに……」
確かに心配してくれるのはありがたい。嬉しい。だが、頼む!! 姉ちゃんよ!! 泣き止め!! 泣き止むんだぁぁぁぁ!!!!
「あれなんだよ俺!! ほらおじちゃんの家に居たんだ!!」
「連絡もなし。言い訳する男は……死」
事実だっつの!!
「な? な? 聞いてくれよ!? 親父!! ほら証拠の飴ちゃんだってここにあ…………あ」
忘 れ ま し た。
お 疲 れ 様 で す。
「うぎゃああああああああああああああああぇ!!!!!!」
肋骨が折れました。
でも姉ちゃんは泣き止んでくれましたから、安心です。
でも、いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!
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