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  朝。俺はいつもの様に起き、1人で朝食を作るはずだった。 だが、目覚ましが鳴る前にとても美味しそうな匂いが香ってきて俺は目を覚ました。 「あ、おはようございます。晋さん」 おはようと、返事をし台所の食卓に腰をおろす。 …ん? 今、俺誰に挨拶をした…? 「晋さん?顔洗ってきたらいかがですか?ちゃんと目が覚めますよ。」 声のするほうに顔を向け、目を細め顔をみる。 「え?ゥわ!ちょ!?お、女の子!!?…って、あ。そういえば…。」 発する言葉は何を言いたいか自分でもわからず、勝手に自分で納得してしまう。 昨日、寝る時に予定決めてた事を忘れてた。 「晋さん、私の事忘れてたんですか…?」 案の定核心をついてくる千華。 「あ、いや。ちょっとびっくりしただけだよ。」 「そうですか。ならいいんですが。」 「じゃあ、俺顔洗ってくる!」 とは言うものの、あれがちょっとか、と顔を洗いながら自分にツッコミを入れる。 それにしてもなんだ? 顔を洗っても起きた瞬間の目のごわごわ感が全く消えない。 視力でも悪くなったのだろうか? にしても、なぜ? ゲームとか読者とかは極力夜はしないようにしてたんだが…。 それと、千華は目が見えないはずだ。なのになぜ料理などできる? 考えれば考えるほど疑問が止まらなくなる俺は、あっさり考えるのを止めた。 だが。今思えばここで既に手遅れだったのかもしれない。 運命の歯車と俺の日常が狂い始めたのは。
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