クロの災難(後編)

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「さあ、跪いて靴をお舐めなさい?」 「ていっ!」 「ふぎゃんっ…」 美羽が峰打ちをかましてなんとか脱出。俺は立ち上がって礼を言う。 「悪ぃな、うん。」 「ううん、これは暴走するといつもこうだから。」 うんうんと頷くやつら。とりあえず可憐はおぶってやることにした。 「さて、改めて買いにいくか。」 「店の前だもんね。ところで頭のはいいの?」 「もう諦めた。」 正確には諦めざるを得なかった。外したらあとで怖そうだし。 「へぇ~」 「まぞひすとですね!」 「もしかして健一お兄ちゃんってMなのですか?」 「Mなのですか?」 「んなわけあるか!?」 「あら、疑問系ですの?」 「あー、自分じゃよくわからないしな。」 てめぇら、人をからかって遊ぶんじゃねぇ、って言ってやりたかったが、やめておいた。火に油を注ぐ気がしてしょうがなかったからな。 ―店の中に入った直後だった。 「手を上げろ!」 強盗の声が響いた。何なんだ、今日は厄日か?それとも誰かの仕組んだ嫌がらせか?どっちにしろ俺はため息をつかざるを得なかった。 「お兄ちゃん、どうしよう?」 「健一お兄ちゃん、怖いですぅ…」 「ですぅ…」 「警察を呼ぶにも時間がかかりますし…」 焦る美羽たち。俺は今何ができるかを考えた。 「よし、少し行ってくるわ。」 「行くって…え…むごっ!?」 「大きな声出すな、気づかれるだろ?それとも殺されたいのか?」 美羽は首を大きく横に降る。相当嫌らしいな。 「…無理しないでね?」 「ファイトですっ!」 「ですっ!」 「頑張れっ。」 「警察には私が連絡しておきますわ。」 「おう。」 俺は立ち上がると、強盗に気づかれないように棚の影に隠れて歩いた。向こうは銃を持っているようだが。そんなもの関係ねぇ。武器がなんだろうが突っ込むだけだ。 「これに金を入れろ。」 あと少し、あと少し…。そのときだった。 ―バキューン… 銃声が鳴り響く。弾丸は俺を掠めて通った。 「チッ…時間がねぇ、早くしろ!」 「させるかぁ!」 綺麗にドロップキックを決める。 「ぐおっ…」 「お兄…ちゃん!?」 強盗が倒れ際に撃った弾が俺に当たる。 「な…」 その場に突っ伏す俺。俺は警察のサイレンの音が耳に入ると、そのまま目を閉じた。 「お兄ちゃん!」 「健一お兄ちゃん!」 「ちゃん!」 「健一さん!」 「あわわ…」 そんな声が聞こえた気がした。
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