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「お兄ちゃんのバカァ…」
美羽が俺の顔をひっぱたく。
「いってぇ!?」
「無茶しないでって、ぐすっ…言ったのに…ぐすっ…。あのまま…ふぇっ…死んだら…どうするの…?」
…そうだよな。考えてみれば無茶したからこうなったんだよな。怪我したのも俺が無理して突っ込んだからだし。
「…ごめんな。」
「…うん。」
俺は美羽の頭を撫でてやる。
「お兄ちゃんの手、あったかい…」
「まだ生きてる証拠さ。」「感動の場面中、申し訳ないのですが、そろそろ面会時間が…」
時計を見るともう六時を回っている。
「…泊まってく。」
「…は?」
さっきの話からすると倒れたのは月曜日のはずだから今日は土曜日。確かに学校も休みだが。
「しかし…」
「泊まってく。」
断言している妹を見ると少し呆れてくる。だが、その呆れがかえって気持ちいい。
「どうにかなりませんかね?」
「…わかりました。特別ですよ?」
「わーい!」
両手でバンザイする美羽。まだまだ子供だなぁと思うが、本人かなりのおませさんだったりする。
「それじゃあ、我々は帰ろうか。」
「そうね、じゃあ、明後日退院みたいだから。またそのときに。」
「うん、わかった。じゃあね。」
俺は見送り代わりにベッドから手を振った。両親は笑って手を振り返してくれた。
「寝るときは、これ、使ってくださいね?」
美羽は毛布を看護婦さんから受けとると、
「はい、ありがとうございます!」
と元気よく返した。
「本当にすいませんでした。」
「いえいえ。」
それだけ言うと看護婦さんは部屋の外に出ていった。
「さて、どうしようか。」
思わず聞いてしまう俺。
「んー…」
美羽は少し考えている素振りをして、
「無理したお兄ちゃんにお仕置き。」
お仕置きってなんだ、とか聞く暇もなく俺は美羽に襲われていた。
「失礼しまーす、夕食の…」
タイミング悪すぎます。
「…ごゆっくりどうぞー。」
「違います、誤解です!」
「あら、あなた、あの夜のことは嘘だったの!?」
「あの夜ってなんだ!?」
「大丈夫ですよ、きっと成就しますから。」
「あー、もう、めんどくせぇ!」
俺は二人を相手にしばらくツッコミを続けるのであった。
「ぜぇ、ぜぇ、さすがに疲れた。」
「私も…」
「お前は何もしてないだろ。」
この後妹にもう一回襲われたのは言うまでもなかろう。
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