あらすじ

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
ある晴れた日のことだ。実に清々しい朝だ、なんて柄にもないことを言いたくなるくらいにな。俺は空気を一杯吸って、深呼吸した。 「学校まで時間があるな…」 「ねぇ、お兄ちゃん。」 「んあ?」 妹が俺に声をかける。そんな平和な日常。それが当たり前だった。そんな日常が続くはずだった。 「ほいじゃ、そろそろ学校に行ってくるわ。」 「うん、行ってらっしゃい!」 「遅くならないうちに帰ってくるのよ。」 「わぁってるって。お袋も飯作って待っててくれればいいから。」 俺は心配かけまいと親に言ってやった。 「あ、お兄ちゃん。」 「なんだ?」 「はい、お弁当。」 「おぉ、すまねぇ。」 「できた妹を持ったものだねぇ。」 親がケタケタと笑っている。それに釣られて俺らも笑った。 「あぁ、でも俺もこいつも、立派なお袋の子供さ。」 「えぇ、わかっているわよ。それよりアンタ、時間は大丈夫なのかい?」 「うわっ、やっべ!んじゃ、ホントに行ってきます!」 「気を付けてねー!」 俺は手を振って答えてやる。 「おぅ!」 こんな何もない朝なんて珍しい。逆に何かあるんじゃないか。 そんな気持ちで一杯だった。 ―俺は駅に着くと、ベンチに腰かけて電車を待った。俺の高校は別段変わったところのない、進学校だったりする。俺も晴れて合格して、行っているわけだ。 ただ、遠い。とても遠い。片道一時間。比較的大きな駅なので、交通の便には困らないのだが、やはり暇である。 「なんかねーかな…」 なんて呟いていると、他校の生徒が、 「ねぇ、昨日の『探偵日記』見た?」 「見た見た。やっぱり俊くんはかっこいいよね!」 「うんうん!」 「早く続きが気になるなぁ…」 探偵日記とは、俺らの学校でも噂になっている、ケータイ小説が元となった人気の探偵ドラマだ。俊、というイケメン探偵が、数々の謎を解き明かす、という、ごく普通の探偵ドラマで、俺も妹も、そしてお袋、親父までもが探偵の立場として互いの意見を述べあう程、ハマっている。ちなみに、正答率は俺が一番高かったりもするが、決してすべてわかるわけではないことを言っておく。 「いい加減ここまで影響される奴なんて俺らくらいだよな…」 などと思って学校に着いてから、 ―この物語は始まる―
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!