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「っと、トシ、残りの2人呼んできて。生徒会長の権限で。」
「おま、それは濫用じゃ…」
「そういう不届き者方がどうかと思いますわ…」
「だねー。でも権限使っちゃっていいの?」
「副会長でも同じことするだろうよ。」
まあ、あの人は正義だからな。
「へくちっ。」
「ゆこちゃん風邪?」
「かしら。」
「気を付けなよ?最近流行ってるみたいだし。」
「そうね。」
―放課後。(会長権限で)3人に集まってもらった。もちろん、桜井先輩もいる。後、なぜか竹虎千代(たけとらちよ)―俺にベタ惚れとかいう噂もある―もいる。
「えー、みなさんに集まってもらったのは桜井先輩のスパイク盗難事件についてですの。とりあえず3人にはそれぞれ自分が入ったときの状況についてのお話を伺いたいと思いますわ。」「それじゃあ夢野先輩からお願いします。」
「えっと、僕は部室にサッカーボールを取りにいったんだ。マネージャーから聞いてると思うけど、マイサッカーボールね。」
「あれ、金曜日って紅白戦でしたよね?」
トシが尋ねる。
「どういう事だ?」
「いや、試合の時は個人のボールは使わないことになってるからさ。」
「ああ、それは自分の出番がなかったときにアップしてたんだよ。一応、呼ばれていたからね。ちなみに、僕が入ったときにはまだキャプテンのスパイクはあったよ。」
「キャプテンってその試合どのスパイク履いてました?」
「昔の奴だ。あの青い奴。」
なるほど、桜井先輩は見せるためだけに持ってきたようだ。
「鞄にしまわなかったんですか?」
「いや、スパイクの袋に名前は書いてあったからな。だから油断してた。」
「そうですか、油断は禁物、でしたね。」
「まさにその通りだな。」「あの…」
ここで千代が口を出す。
「実際、キャプテンの、スパイクは、鞄の、上に、あった、から…」
「キャプテンの?」
「うん…」
「あのさ、クロの裾を引っ張って話すのやめてくれない?」
「ひぇぅっ」
日和が不満そうに文句を言うと、千代が腕を絡めてきた。昔から怖いものを見ると、俺に隠れたり絡み付いたりする癖はあったが、今回のは完全にどさくさ紛れだろうが。他の女子2人は俺を睨む。俺は苦笑いするしかなかった。
「そういえば袋は無事だったんですか?」
「ああ、中身だけやられた。」
やはりスパイク目的か。
「そういえばトシの方は?」
俺はトシの方に話を聞くことにした。
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