SS① トラの想い

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「私、大きくなったらあなたのお嫁さんになる!」 「なれるものならな。」 あの話はいつの話だったっけ。少なくともお母さんがいたとき。 「こらー、千代をいじめるなー!」 「ゲ、健一だ。」 「構うことはない、やれ。」 「だが断る。」 「ぐはっ!?」 「逃げるぞ!」 あのときからだった。私が健一くんに惹かれたのは。いじめられていた私を助けてくれた。心の闇を取り払ってくれた。なのに… 「竹虎美代子さんが亡くなりました。」 え?お母さんが、嘘だよね? 「お母さんが死んじゃったって嘘だよね?」 「…」 「本当だ。お前もいい加減受け入れろ。健一君だって我慢してるんだ。」 「え?」 そこからの記憶はあまりない。でも健一くんがこう言ってくれたのは覚えてる。 「お母さんを自殺に追いやったのは僕だ。」 そう言ってくれた。だから私は生きてるんだ。健一くんにはホントに酷いことしたなぁ。 「あんたなんか、死んじゃえばいいんだ!」 こんなことも言っちゃったんだよね。でも健一くんは逃げずに、何も嫌がらずに聞いてくれた。他の人たちも最初はビックリしてただろうなぁ… ―そういえば殺しかけたこともあったっけ。あのときは先生が止めてくれたんだよね。止めてくれなきゃ、今ごろ…ううん、考えるのはよそう。その頃のことが後遺症みたいになって、あまりはっきり喋れないの。わかってる。私がバカだったって。 この後にお父さんからホントのことは聞いた。お母さん、私のために借金までしていたらしくて。それでストレスとか色々たまってたらしくて。 ―この後はもちろん、健一くんのために一生懸命尽くした。自分の身を削ってでも尽くさなきゃならない。そう思ってたんだ。でも健一くんはこう言ってくれた。 「もういいんだ。」 「でも…」 「なあ、昔のように戻らないか?」 無理なのはわかっていた。わかっていたけど…甘えてしまった。 「…うん…」 私は何を生き甲斐にすればいいのか、私は何のために生まれたのか、私のどこがいけなかったのか、色々考えた。 ―そして今。 「おーい、早く来いよ。」 「あ、うん…」 健一くんとまた一緒にいることができる。また一緒に話すことができる。また一緒に遊ぶことができる。それだけで胸が一杯だった。 「さあ、今日も活動ですわよ!」 「はいはい。」 …おまけが2人いるけど。それでも… ―好きだよ、健一くん♥
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