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「私、大きくなったらあなたのお嫁さんになる!」
「なれるものならな。」
あの話はいつの話だったっけ。少なくともお母さんがいたとき。
「こらー、千代をいじめるなー!」
「ゲ、健一だ。」
「構うことはない、やれ。」
「だが断る。」
「ぐはっ!?」
「逃げるぞ!」
あのときからだった。私が健一くんに惹かれたのは。いじめられていた私を助けてくれた。心の闇を取り払ってくれた。なのに…
「竹虎美代子さんが亡くなりました。」
え?お母さんが、嘘だよね?
「お母さんが死んじゃったって嘘だよね?」
「…」
「本当だ。お前もいい加減受け入れろ。健一君だって我慢してるんだ。」
「え?」
そこからの記憶はあまりない。でも健一くんがこう言ってくれたのは覚えてる。
「お母さんを自殺に追いやったのは僕だ。」
そう言ってくれた。だから私は生きてるんだ。健一くんにはホントに酷いことしたなぁ。
「あんたなんか、死んじゃえばいいんだ!」
こんなことも言っちゃったんだよね。でも健一くんは逃げずに、何も嫌がらずに聞いてくれた。他の人たちも最初はビックリしてただろうなぁ…
―そういえば殺しかけたこともあったっけ。あのときは先生が止めてくれたんだよね。止めてくれなきゃ、今ごろ…ううん、考えるのはよそう。その頃のことが後遺症みたいになって、あまりはっきり喋れないの。わかってる。私がバカだったって。
この後にお父さんからホントのことは聞いた。お母さん、私のために借金までしていたらしくて。それでストレスとか色々たまってたらしくて。
―この後はもちろん、健一くんのために一生懸命尽くした。自分の身を削ってでも尽くさなきゃならない。そう思ってたんだ。でも健一くんはこう言ってくれた。
「もういいんだ。」
「でも…」
「なあ、昔のように戻らないか?」
無理なのはわかっていた。わかっていたけど…甘えてしまった。
「…うん…」
私は何を生き甲斐にすればいいのか、私は何のために生まれたのか、私のどこがいけなかったのか、色々考えた。
―そして今。
「おーい、早く来いよ。」
「あ、うん…」
健一くんとまた一緒にいることができる。また一緒に話すことができる。また一緒に遊ぶことができる。それだけで胸が一杯だった。
「さあ、今日も活動ですわよ!」
「はいはい。」
…おまけが2人いるけど。それでも…
―好きだよ、健一くん♥
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